幅60cmでは曲がれないー10家族のものがたりー

「どの会社も車椅子で暮らせるというんですけどね、
すべて図面上の話しで、実際には暮らせない提案ばかりだったんですよ」
住宅会社を探していた当時のことを、小林さんは苦笑いしながら振り返ってくれた。

廊下ひとつ取っても、住宅会社の言うことは納得がいかないことばかりだった
のだという。一般的な廊下は幅85cmで、多くの会社はそれで問題ないと
言ったそうだ。確かに幅60cm程度の車椅子が通るのに問題はない。
車椅子の人と暮らしたことがなければ、それで十分だと思うのも
無理はないだろう。

だが、小林さんは「それでは車椅子の脇を人が通れないんです」
と指摘する。車椅子の人にとっては、85cmの廊下は、
自分が通るために誰かに道を開けてもらわなければならない場所に
なってしまうのだ。とても気兼ねなく暮らすとはいかない。

「直角に曲がるところでも、幅が60cmあれば曲がれると言われ
ましたが、曲がれるはずがありません。体の不自由な義母が
操作しているんですよ、そんな簡単ではありません」

同じように、キッチンやトイレも車椅子で入れればいいという
わけではない。実際に使ってみてゆとりがあるか、使い勝手が
いいかが重要だった。それをわかってくれる住宅会社を、
小林さんは探し続けた。そして夢ハウスに出会った。
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