祖父の一世一代の大仕事を受け継ぐ。ー10家族のものがたり

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「早く建て替えたいなんてまったく思っていませんでしたが、今は、もっと早く建てれば

よかったと思っています」悩んだ末に建て替えを決めたご主人がそう語るには訳がある。

前の家のいいところを、新しい家の随所に取り入れたのだ。

まずは、お父様の想いを宿す古材だ。

お祖父様によって選りすぐられた前の家の木材は、新しい家にも十分使える強度を持つも

のがたくさんあった。歳月を経て増した色つやも美しい。そうした古材を新しい家に

活かそうと決めたのだ。和室の天井やリビングの梁などに、新しい木材と古材が

バランスよく配された。ご主人が「ふと目お上げたときに前の家の木材が目に入ると、

なんとも言えぬ懐かしい気持ちになりますね」

と話す通り、子供の頃からの思い出を大切に受け継いだ家になった。
和室
基本的な間取りも前の家と同じだ。もちろん、細かく仕切られていた部屋を

ひとつにしたり、縁側を設けるなども、今の暮らしに合わせてアレンジを施した。

けれども、ビングや和室にのある場所など、基本的な間の置き方

変わっていないのだ。それは、前の家がこの地域の気候風土に相応しい

間取りだったからだ。

「一般的には東南の角をリビングにするようですが、ここでは北東向きが一番いい。

田んぼからの涼しい風が家の中を通り抜けていくんです」

確かに、家の中を抜ける光と風が心地いい。

「昔の人にとって家づくりは一世一代の大仕事でしたからね」

丸山さんのお祖父様精魂込めてつくった家は、現代の設計者も❝これしかない❞

という間取りだったのだ。