佐保姫は佐保山の神霊で、春をつかさどる女神です。
春は芽吹きの季節ですから、佐保姫は芽吹きをつかさどる女神とも言えます。
五行説によれば春は東の方角にあたり、平城京の東には佐保山(現在の奈良県法華寺町法華町)があり
そこに宿る神霊佐保姫を春の女神と呼ぶようになりました。
白く柔らかな春霞の衣をまとう若々しい女性と考えられ、佐保山の神が春を司る神となりました。
佐保姫は染めものや機織を司る女神と位置づけられ古くから信仰を集められ
佐保山を取り巻く薄衣のような春霞は佐保姫が織り出すものと和歌に歌われています。
佐保姫の 糸染め掛くる青柳を 吹きな乱りそ 春の山風 平兼盛 『詞花集』
(佐保姫が 染めた糸を掛けた柳の枝 を吹き乱さないでおくれ 春の山風よ)
柳の瑞々しい若葉を 佐保姫の染めた糸にたとえています。